脱兎の夢日記。

脱兎の夢日記。

夢と現実の日記。

☾ | あなたは誰

平凡な中学2年生の私。
今日も平和な1日を過ごし、学校から帰宅しようと昇降口に向かっていた。
そこに偶然通りかかった先輩が声をかけてくれた。
いつも元気で優しい先輩に声をかけられてなんだかこちらまで明るい気持ちになった。

先輩は用事があるらしくそのまま職員室に向かって行った。
私は上履きから靴に履き替えて校門に向かった。
すると先輩が体育館裏に向かう後ろ姿が目に入った。
さっき職員室に向かったはずの先輩がなぜ体育館裏に…?
私は疑問に思いながらもその先輩の後ろ姿に声をかけることが出来なかった。

それからというもの「さっき会ったばかりの人とまた遭遇する」という現象が何度も起きるようになった。
まるで同じ人が2人いるようで何だか気味が悪い。

私は全ての人に本物と偽物がいるのではないかと疑うようになった。
しかし、誰に相談してもまともに取り合ってもらえないし、確かな証拠は何もなかった。

日に日に繰り返される謎の現象への恐怖心を取り払うことが出来ず、私はただただ人間を避けるようになった。
自分の目の前にいる人間が誰なのかわからないことが、こんなにも自分の心を不安や孤独で埋めつくすなんて――。

☾| その優しさが毒

学園祭の時期が近づいている。
私がマネージャーを務めているテニス部のみんなは「学園祭の華はオレらが全部いただく!」と意気込んでいた。

学園祭当日に委員会の仕事で少しだけステージに立つ予定があるとみんなに話すと「うちのマネなんだから会場中の視線を集めるくらい目立たなアカン」と盛り上がってしまった。
そして何故かみんなが私の美容やダイエットのサポートをしてくれることになった。
仕事でアナウンスをするだけなのに、こんな大事になるとは…と戸惑いつつも、みんなの勢いに押されて私の美容強化に励む日々が始まった。

しかしながら、元来自堕落な性格の私である。
毎日毎日みんなのサポートにプレッシャーを感じながら自分を律して生活することに徐々に疲労を覚えていった。

学園祭を数日後に控え、全校生徒が準備に勤しむ中、ついに私のストレスは限界を迎えた。
気づいたら物陰で瓶1個分の錠剤を全て飲み干していた。
薬の効果で手足が痺れて倒れる。

そこに偶然テニス部の部長が通りかかった。
私の手元に転がる空っぽの薬瓶を見てすぐに事態を察したらしい。

「俺が悪かった」
部長として責任を感じたのだろうか。
彼は謝罪の言葉を述べながら、私の喉奥まで指を入れ、薬を吐き出させた。

☾| 誘惑に弱い

ずっと昔に好きだった女の子が家に来る気配に気づいた。
とっさに戸締りして居留守を使おうとしたが、合鍵を渡してあったことを忘れていた。
彼女は合鍵を使い、平然と家に入ってきた。
私は久しぶりに会うだけで心が苦しいのに、彼女はいつも通りの笑顔だった。
そうやっていつも笑顔で距離を詰めてくる彼女が可愛くて憎い。
そんなことを思いながらも「携帯変えて連絡先がわからなくなっちゃったからLINEを交換しよう」と言われたら流されて交換してしまった私がいる。

☾| 好きを仕事にするとなんか違う

私の大好きな作品を描いている漫画家さんのアシスタントになった。
最初は嬉しかったが「自分が買って読む漫画の一部を自分が描いている」という状態に疑問を抱き始めている。
スケジュールはいつもギリギリで明日までに仕上げなければいけない原稿が山のよう。
もうすぐ新しいグッズが発売されるらしいけど、忙しくてどんなグッズなのか確認出来ていない。
仕事になると楽しむ余裕がなくなるみたい。

☾| イルカと少年

夏のビーチ。
たくさんのイルカが海で泳いでいて、その波の中で私は溺れていた。
このまま死ぬのかなと思った。
すると、1匹イルカが私を乗せて、そのまま岸辺へ運んでくれた。
イルカは私を置いて海へ帰ってしまった。
しばらく砂浜をフラフラしていると、妙に可愛らしい格好をした少年を見つけた。
私はその子にお礼をしなければいけないと直感的に思ったが、上手く話せなかった。

☾| 化け物の支配

この国は人間の他にもう一つの種族が支配している。
彼らは人間の遺伝子の他にサイドマターと呼ばれる謎の微粒子を体内に有しており、人間に擬態することが可能だが、その真の姿は人間とは異なる。
触手のようなもの、大きな目が胴体の真ん中についているもの、百足のようなもの、甲羅で覆われているものなど、個体差はあるもののどれも奇妙かつグロテスクであり、人間に恐怖を与えるには充分のインパクトだ。
言ってしまえば彼らは人間にとって恐ろしい化け物である。

最近では人間が捕食される事件も増えてきたため、人々は彼らが多く生息する地区には近寄らないようになった。
彼らが占拠する地域の付近では、日雇い労働者やホームレス、元犯罪者、難民など、普通の生活が困難な者だけが住みついている。

このような現状を憂いた政府は彼らを排除する計画を進め始めた。
私はその計画を担う特殊部署の下っ端職員だ。
私のような下っ端職員のほとんどは高給に釣られて雇われた、学歴も技術も何も持っていないフリーターのような人間だ。
社会で優遇されるようなものを何も持っていない底辺のフリーターが高給で雇われる理由は、誰でも想像に容易いだろう。
命は投げ捨てるような気持ちで契約書にサインをして雇われたのだ。

そんな私がいる場所、それは化け物たちに占拠されかけているN地区だ。
この地区の様子を探索して報告するのが今回の仕事だ。

N地区は閑散とした住宅地であった。
元々は人間が使用していたであろう少し廃れた住宅が所々建っている他、目立った娯楽施設は見当たらない。
歩道橋には高さ3mはありそうなカラフルで毒々しい花のような見た目をした化け物が張り付いている。
辺りを歩く人間はこの地区から離れることのできない貧困者か、もしくは擬態した化け物なのか、定かではない。
どちらにせよ虚な瞳と薄汚れた衣服が、ここは健康で文化的な生活を保証された場所ではないということを象徴して歩いているようだった。