脱兎の夢日記。

脱兎の夢日記。

夢と現実の日記。

☾| 化け物の支配

この国は人間の他にもう一つの種族が支配している。
彼らは人間の遺伝子の他にサイドマターと呼ばれる謎の微粒子を体内に有しており、人間に擬態することが可能だが、その真の姿は人間とは異なる。
触手のようなもの、大きな目が胴体の真ん中についているもの、百足のようなもの、甲羅で覆われているものなど、個体差はあるもののどれも奇妙かつグロテスクであり、人間に恐怖を与えるには充分のインパクトだ。
言ってしまえば彼らは人間にとって恐ろしい化け物である。

最近では人間が捕食される事件も増えてきたため、人々は彼らが多く生息する地区には近寄らないようになった。
彼らが占拠する地域の付近では、日雇い労働者やホームレス、元犯罪者、難民など、普通の生活が困難な者だけが住みついている。

このような現状を憂いた政府は彼らを排除する計画を進め始めた。
私はその計画を担う特殊部署の下っ端職員だ。
私のような下っ端職員のほとんどは高給に釣られて雇われた、学歴も技術も何も持っていないフリーターのような人間だ。
社会で優遇されるようなものを何も持っていない底辺のフリーターが高給で雇われる理由は、誰でも想像に容易いだろう。
命は投げ捨てるような気持ちで契約書にサインをして雇われたのだ。

そんな私がいる場所、それは化け物たちに占拠されかけているN地区だ。
この地区の様子を探索して報告するのが今回の仕事だ。

N地区は閑散とした住宅地であった。
元々は人間が使用していたであろう少し廃れた住宅が所々建っている他、目立った娯楽施設は見当たらない。
歩道橋には高さ3mはありそうなカラフルで毒々しい花のような見た目をした化け物が張り付いている。
辺りを歩く人間はこの地区から離れることのできない貧困者か、もしくは擬態した化け物なのか、定かではない。
どちらにせよ虚な瞳と薄汚れた衣服が、ここは健康で文化的な生活を保証された場所ではないということを象徴して歩いているようだった。